補助金・助成金とは?

補助金と助成金は、企業を支援するために国や自治体から提供される資金です。目的や条件、申請方法などに違いがあり、それぞれの特性を理解することで効果的に活用することができます。

重要ポイント

補助金と助成金は、事業内容や目的によって最適な選択肢が異なります。自社の状況や目指す方向性に合わせて、適切な制度を選びましょう。

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経済成長の促進

新規事業開発や設備投資などを支援し、企業の成長と経済活性化に貢献します。

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雇用の創出と安定

人材確保や育成、労働環境改善を通じて、雇用の創出と安定を図ります。

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イノベーションの促進

新技術開発や研究活動への支援を通じて、産業のイノベーションを促進します。

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社会課題への対応

環境問題や社会的課題に取り組む事業を支援し、持続可能な社会の実現に貢献します。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は、目的や運営方法、申請プロセスなどに違いがあります。それぞれの特徴を把握して、最適な選択をしましょう。

項目 補助金 助成金
主な目的 事業拡大のための支援 労働者への投資の補填
交付元 経済産業省など 厚生労働省
財源 税金 雇用保険料
歴史 比較的新しい(約7年) 長い歴史(約20年)
運営 民間が運営 行政が運営
受給要件 審査に合格する必要がある 要件をクリアすれば基本的に全員対象
審査・チェック 審査が厳しいが後のチェックは比較的緩やか 簡単に受けられるが後からのチェックが厳しい
受給までの期間 早くて4ヶ月〜1年 1年〜1年半
代表的な例 小規模事業者持続化補助金 キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金

活用のポイント

補助金は審査が厳しいですが、要領を得れば通過しやすくなります。助成金は後からのチェックが厳しいため、要件を確実に満たし、適切に実施・記録することが重要です。

「補助金と助成金の違いは、名称で見分けられます。『○○補助金』『○○助成金』というように、正式名称の末尾に明記されています。」

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップや能力開発を支援するための助成金制度です。主に「有期実習型コース」と「リスキリングコース」の2種類があります。

有期実習型コース
リスキリングコース

有期実習型コース

有期実習型コースは、アルバイトやパートなどの非正社員に対して実施する職業訓練を支援する制度です。OJT(実務訓練)とOff-JT(座学)を組み合わせた訓練を実施することで助成を受けられます。

主な特徴

  • 対象者は雇用保険に加入している非正社員(アルバイト、パートなど)
  • 訓練時間は10時間以上必要
  • 外部研修を委託した場合、経費の75%が助成される
  • 通常1人当たり20万〜30万円の研修パッケージが一般的
  • 1社で3つまでの訓練を実施可能

活用例

例えば、40万円の研修を外部委託した場合、75%の30万円が助成金として戻ってきます。実質10万円で40万円分の研修を実施できることになります。この助成金を従業員の人件費に充てることも可能です。

訓練内容の例

ビジネスマナー研修

新入社員や非正社員を正社員へ登用する際に必要な基本的なビジネスマナーを学ぶ研修です。

コミュニケーション ビジネスマナー 社会人基礎
コミュニケーション研修

職場でのコミュニケーション能力を高め、チームワークを向上させるための研修です。

チームワーク コミュニケーション 対人スキル
DX研修

デジタル技術を活用したビジネス変革に必要なスキルを習得する研修です。

デジタル IT技術 業務効率化

注意点

訓練時間には、ワーク(テスト)の時間は含まれません。例えば42時間の研修を計画していて、その中にワークが含まれていると、実際の訓練時間とみなされなくなり、不正受給と判断される可能性があります。そのため、計画時には余裕を持たせて45時間程度に設定するなどの工夫が必要です。

リスキリングコース

リスキリングコースは、既存の従業員に新たなスキルを習得させるための訓練を支援する制度です。特に新規事業や技術革新に対応するためのスキルアップに活用できます。

主な特徴

  • 対象者は雇用保険に加入している従業員
  • オンライン研修(Zoom、eラーニングなど)でも実施可能
  • 訓練時間は10時間以上100時間未満
  • 助成上限額は中小企業30万円、大企業20万円
  • LMS(Learning Management System)を使用して受講管理が可能

LMSの活用

リスキリングコースでは、LMS(Learning Management System)を活用して受講管理を行うことができます。このシステムを使うことで、受講者が動画を最後まで視聴したかどうかの確認やテストの実施、レポート提出などの管理が可能になります。

研修内容の例

DX化研修

デジタルトランスフォーメーションに対応するためのスキルを習得する研修です。

デジタル化 IT活用 業務改革
AI活用研修

AIツールを業務に活用するためのスキルを習得する研修です。

AI 生成AI 業務効率化
グリーン化対応研修

カーボンニュートラルなど環境対応に必要なスキルを習得する研修です。

環境対応 持続可能性 カーボンニュートラル

注意点

リスキリングコースは新規事業に関連する内容が対象となります。既存事業に関する内容は原則として対象外ですが、申請書類の書き方によっては新規事業の一環として認められる場合もあります。申請前に専門家に相談することをおすすめします。

人材開発支援助成金の主なメリット

人材開発支援助成金を活用することで、新入社員や非正社員の教育コストを抑えながら質の高い研修を実施できます。特に入社から2〜3ヶ月の間に離職するリスクがある中で、国の支援を受けながら人材育成を行えるのは大きなメリットです。

申請の複雑さ 中程度
受給までの期間 1年〜1年半
活用しやすさ 高い

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成金制度です。正社員化や処遇改善を行った事業主に対して支給されます。

正社員化コース

非正規雇用労働者を正社員に転換または直接雇用した場合に助成されるコースです。

支給額

対象者区分 中小企業 大企業
重点支援対象者 80万円 60万円
一般対象者 40万円 30万円

重点支援対象者の条件

パターンA:雇い入れから3年以上経過している者

同一の事業主に雇用されて3年以上経過している有期契約労働者等を正社員に転換した場合、重点支援対象者として扱われます。

パターンB:雇い入れから3年未満で特定の条件を満たす者

同一の事業主に雇用されて3年未満でも、特定の条件(女性、35歳未満、35歳以上45歳未満、45歳以上、就職氷河期世代など)に該当する場合は重点支援対象者として扱われます。

パターンC:派遣労働者、母子家庭の母など特定の属性を持つ者

派遣労働者、母子家庭の母などの特定の属性を持つ者を正社員に転換した場合、重点支援対象者として扱われます。

人材開発支援助成金の特定訓練終了者

人材開発支援助成金の訓練を修了した者を正社員に転換した場合、重点支援対象者として扱われます。これにより、人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金を組み合わせて活用することが可能になります。

注意点

新卒入社1年未満の従業員は対象外となります。また、正社員化する際には賃金が3%以上上がることが条件となる場合があります。

活用ポイント

まず人材開発支援助成金を活用して従業員の能力開発を行い、その後キャリアアップ助成金を活用して正社員化するという流れが効果的です。これにより、能力開発と処遇改善の両面から従業員のキャリアアップを支援できます。

STEP 1

人材開発支援助成金の活用

非正規雇用労働者に対して有期実習型コースを活用し、必要なスキルや知識を身につけるための研修を実施します。

STEP 2

スキルアップの確認

研修を通じて習得したスキルや能力を評価し、正社員としての適性を確認します。

STEP 3

正社員への転換

条件を満たす従業員を正社員に転換し、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請します。

STEP 4

助成金の受給

審査を経て、キャリアアップ助成金が支給されます。中小企業の場合、重点支援対象者1人につき最大80万円が支給されます。

業務改善助成金

業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資やシステム導入などを行い、事業場内の最低賃金を引き上げた事業主に対して助成される制度です。

制度の概要

事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資やシステム開発などを行った場合に、その費用の一部が助成されます。

活用例

例えば、800万円のシステム開発を依頼し、実際の開発コストが100万円の場合、国から600万円が助成されるため、実質的に500万円のプラスになる可能性があります。ただし、このような活用方法は基本的に身内での取引が望ましく、外部との取引では書類対応などが複雑になります。

活用できる例

  • 業務効率化のためのシステム開発
  • 生産性向上のための設備導入
  • 業務プロセス改善のためのコンサルティング
  • 労働環境改善のための設備導入

注意点

業務改善助成金を受給するためには、雇用保険に加入している従業員が存在している必要があります。また、申請から受給までに1年から1年半ほどかかる場合があります。

活用のポイント

業務改善助成金は書類の量が多く、対応が大変です。専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。また、身内での取引の方が書類対応がスムーズになる場合が多いです。

申請フローと注意点

補助金・助成金の申請は複雑で、多くの書類が必要になります。ここでは、一般的な申請フローと注意点をまとめます。

STEP 1:情報収集

自社に合った補助金・助成金を探します。公式サイトや専門家からの情報を集め、要件や申請方法を確認します。

STEP 2:計画策定

補助金・助成金の要件に合わせた事業計画や研修計画を策定します。目標や内容、予算などを明確にします。

STEP 3:申請準備

必要な書類を準備します。助成金の場合、30種類程度の書類が必要になることもあります。専門家のサポートを受けることをおすすめします。

STEP 4:申請

準備した書類を提出します。期限や提出方法を確認し、不備がないようにします。

STEP 5:実施・記録

計画に沿って事業や研修を実施し、詳細な記録を残します。特に助成金は後からのチェックが厳しいため、しっかりとした証拠を残すことが重要です。

STEP 6:報告・請求

実施後、報告書や請求書などを提出します。実績や成果を明確に示し、要件を満たしていることを証明します。

STEP 7:受給

審査を経て、補助金・助成金が支給されます。補助金は早くて4ヶ月、助成金は1年〜1年半かかる場合があります。

申請の際の注意点

  • 申請前に必ず要件を確認し、自社が対象となるか確認する
  • 期限を厳守する(期限を過ぎると申請できない場合が多い)
  • 不明点は問い合わせる(自己解釈で進めると不備の原因になる)
  • 専門家(社会保険労務士など)のサポートを受ける
  • 実施内容と申請内容の整合性を保つ
  • 詳細な記録を残す(特に助成金は後からのチェックが厳しい)

申請書類作成のポイント

申請書類は複雑で多岐にわたるため、提携の社会保険労務士などの専門家に依頼することが一般的です。手数料として約20%程度かかりますが、専門的なサポートを受けることで申請の成功率が高まります。

補助金・助成金を効果的に活用しよう

適切な補助金・助成金を選び、正しい手続きで申請することで、企業の成長や人材育成を効率的に進めることができます。専門家のサポートを受けながら、積極的に活用しましょう。

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